2015年6月5日金曜日

「 xxxx で音は変わるのか」のガイドライン

いつの間にか静音PC屋からPCオーディオ屋に転身したオリオスペックが、 「NASに搭載するHDDで音が変わるのか」の検証イベントを開催するそうです (リンク先はImpress AKIBA PC Hotline !)。

しかし、このイベントには決定的な問題点があります。それは、聞きにくる人は「変わるかもしれない」と思っているので、思い込みによる影響(いわゆるプラシーボ効果)を排除できない点です。従って、このイベントで「変わった」という結論が出るのはある意味で当然で、「検証」とは言えません。

ある程度信頼性の高い結果を得る方法としては、次のようなガイドラインが考えられます。

1. イベントの告知について

これは、参加者を募る必要がある以上、ある程度は仕方ないでしょう。「 xxxx で音が変わるのか実験します」と告知するのは、ここでは不問に付します。ただし、xxxx で「良く / 悪く」なるかという書き方は、一定方向への先入観を与える可能性が高いので、するべきではないでしょう。

2. イベントの内容について

まず、変更点が何であるか(たとえば上記のイベントならNASのHDD)を記載するのは、できれば避けるべきですが、記載した上で先入観を排除する方法も考えられます。具体的には、「全く同じ構成のものを紛れ込ませる」ことです。たとえば、
  • 被検体A:パーツaを使用し、他の構成は同じとする
  • 被検体B:パーツbを使用し、他の構成は同じとする
  • 被検体C:パーツaを使用し、他の構成は同じとする
つまり、AとCは全く同じなので、本来なら「Bだけ違う音がする」と答えるのが正解です。従って、「A、B、Cはいずれも違う音がする」や「Aだけ(Cだけ)違う音がする」という回答は、正しく判別できていないことになります。

もしくは、正しく判別できているものの、その交換したパーツ以外の要素によって音質が変化し、その変化量が交換したパーツより大きいという可能性を示しています。たとえば上記の例で言えば、「AとCは中身が違います」と嘘の情報を与えられたせいで音が違うと思い込んだ、という場合です。

3. 実施方法について

できればダブルブラインド方式(聞く人はもちろん、聞かせる人も中身を知らない)がベストですが、そうでなくとも、聞く人は事前に中身を知らないことが最低限必要です。AとCは中身が一緒と知っていれば、当然、「音も同じに決まってる」と思い込んでしまいます。

4. その他

無視されがちな要素ですが、「違いが分からなくても恥じることではない」と周知徹底することが必要でしょう。残念ながら「違いが分かる方が偉い、分からないヤツは音質を語る資格がない」といった風潮があるので、「分かると言わないと恥ずかしい」という強迫観念から誤った回答をする可能性が高いからです。

その意味でも「実は中身が一緒」というのは有効で、AとCは音が違うと答えた人に対して「それみろ、お前も分かってないじゃないか」と言い返す余地を作っておく訳です。まあ、「個体差の影響だ!」とか言って逃げるのは目に見えてますが...

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

NASで音が変わるのか、はLINN AKURATEで経験しました。HDDNASでハイレゾを鳴らしてみたら、なんと、DS-DAC10よりいけてないのでした。これはいかん、SSDに変えたら元に戻りました。さすがにこれくらい違うと、その違いを録音出来そうです。でも、JASRACの音源は一切使えない約款になってるんですね。

S'bhuth さんのコメント...

コメントありがとうございます。

確かに個人レベルだと激変したと感じる場合も多いのですが、公共の場で実施するとなると、ある程度環境を整える必要があるかと思います。参加するのは多少なりとも「変わるかもしれない」と期待している人でしょうし、「変わらない」とは言い辛い雰囲気もあるでしょう。

NASで音が変わるかどうかの結論は割とどうでも良いというか、答えがどちらでも別に構わないのですが、どちらかにバイアスが掛かりやすい状況で「検証イベント」と名乗るのはいかがなものか、ということです。

匿名 さんのコメント...

私の場合は、期待を裏切られるケースが多いようです。昔、TEAC P0 のデモが有って、TEAC さんが金額的にはそこそこのものを使ってセットアップしたのですが、音が悪くてP0 のアドバンテージなんて何もわかりませんでした。世の中には、ただ高いだけという高級機も多いのです。
TEAC さんが帰ってから、私がP0 の実力を問うてみました。私の期待は、手持ちの改造トランスポートがそこそこ頑張ってくれること。そこへ事情を知らない人が入ってきて、「そもそもボリューム設定が違うんじゃないの?」「いや、デジタルなんで、そりゃないから」というやりとりになりました。シングルブラインドでも簡単に判る差が有りました。

NASもオーディオとしては熟成がまだまだで、主流のBuffaloがオーディオ用NAS出してますが、あの値段で普通のパルス電源って考えられないし、ディスクにシステムが入っているので、HDD や SSD が交換できないって不便きわまりない。ケーブルやハブも、ただ高いだけの高級品が沢山出回っているのですね。

今はCD回転させるために200万円近いトランスポートを買う気になれないし、さりとて、PC関係のパーツはどれを信用してよいのだか、、ただ高いだけってのは掴まされたくない。

公共の場でのイベントにこだわってらっしゃるようですが、ハイエンド機材を持ち歩いても、なかなかセッティングがピッタリ決まるということはありません。通常は、意図して成すのはまぁ無理です。でも、ヘッドフォンシステムなら、公共の場で、ほらねっと言えるかもです。ゴ-ルドムンド・テロスは200万円もしますが、考えようによっては、数百万のショップのデモシステムより真値に近い音でしょう。あれ、全然違う、なるほど、そうなんだね、という音を聴かせてくれるはずです。

S'bhuth さんのコメント...

コメントありがとうございます。

確かにセッティングは難しいですね。ハイエンド系のオーディオショーでも、ろくな音が出ていないことも少なくありません。

ただ、ここで言いたかったのはそういう話ではなくて、開場に「違いが分からないと発言するのは恥ずかしい」あるいは「違いが分かる人は偉い」という雰囲気があると、もはや聞き比べとは言えません。なので、実は中身が同じという「ひっかけ」を用意しておいてはどうか、ということです。

もちろん、「セッティング次第で同じものが同じように鳴らない」という可能性も大いに考えられますが、そこまで言い始めると、極論すれば試聴すること自体が無意味という話になりかねません。

それと、別に批判的な意図はないのですが、シングルブラインドテストでは結果の客観性が担保されないのでダブルブラインドテストが必要とされます。シングルブラインドテストとダブルブラインドテストの違いは「得られた結論の客観性」の問題で、「違いが分かるかどうかの難しさ」とは関係がありません。

たとえば、目隠しで砂糖と塩を食べさせてどちらか当てる場合に、食べさせる人が答えを知っているのがシングルブラインドテスト、知らないのがダブルブラインドテストです。どちらの方法でも多くの人は正しく回答できると思いますが、それは「明らかに味が違うから」であって、「テストの方法がどちらか」ということとは無関係です。