2014年11月2日日曜日

Fidelia のサンプリングレートコンバータとディザについて[第1回]

Fidelia には iZotope 社のサンプリングレートコンバータとディザが搭載されていますが、あまり詳しい解説が見当たりません。需要があるのか分かりませんが、「よく分からないからテキトーに設定してる」という人も少なくないと思うので、簡単に解説してみます。

第1回は、まずディザの仕組みの基礎編です。 YouTube から分かりやすい2つの動画を参照して、「ディザとは何か」を理解します。なお、 以下の静止画像は動画から切り出したもので、各動画の著作権者が権利を保有しているため、転載をすることはできません

ディザとは、「ノイズをもってノイズを制する」技術です。ちょっと聞いただけでは意味不明ですが、以下の例を見ればナルホドと思えるでしょう。

画像での例

EarLevel Engineering のエンジニアによるディザの解説です。前半の「画像での例」が分かりやすいので、1分30秒くらいまでの部分を引用します。

たとえば、 15% 〜 85% まで6段階のグレイスケール(灰色)を8ビットで表現すると、左のような画像になります。これをそのまま1ビット(白黒)に変換すると、上半分は真っ黒、下半分は真っ白になって、もはや原形をとどめていません。

ところが、全体にランダムなノイズを適用すると、変換後も原型を読み取ることができます。ノイズのために多少荒れる部分はあっても、大目に見れば原形をとどめていると言えるでしょう。上の結果とどちらが好ましいかは、明らかです。

音声での例


iZotope 社による解説です。今回は「ビット数を減らすことによるノイズの発生」と「ディザの役割」を中心に、動画の前半(3分頃まで)について見ていきます。後半の内容は [第2回] で紹介します。

まずは、実際の音を聞いてみましょう。オリジナルは24ビットで録音されたピアノの音です。ノイズはなく、ダイナミクスも十分で、艶やかな音色です。

次に、8ビットに切り捨てた(truncate)音です。ピアノの音は硬く、伸びがなく、サーという耳障りなノイズが乗っています。

ディザとは、ランダムに付加される背景ノイズです。ほとんど聞き取れないくらいの小さな音ですが、あると、ないとでは大きな違いが生まれます。

24ビットで制作された音を16ビットに落とす場合、ディザを通すことで、もとの波形を維持しやすくなります。

もしディザを通さないと、波形が変わってしまいます。

なぜこのようになるかと言うと、ある波形をデジタル化する際に、24ビットでは細かい階段状に分割することができますが・・・

16ビットでは荒くなるため、中間に当たってしまう部分を表現できなくなります。

このとき、「切り捨て(truncate)」によって近似値に無理やり落とし込むため、本来とは異なる波形に変わってしまうのです。このような変化がノイズとなって表れます。

単純な 1kHz のサイン波の例で見てみましょう。 1kHz の部分にピークがある他は全く信号がなく、綺麗な形をしています。

これを8ビットまで落とすと、非常に多くのノイズが出ていることが分かります。最初に見たピアノの音でサーというノイズが聞こえていたのは、まさにこれです。

では、もう一度ピアノの音を例に、ディザの有無を比較してみましょう。多少サーという音は聞こえますが、ディザなしに比べてピアノの音の不自然さがなくなり、全体として聞きやすい音になりました。

このように、ディザの主な役割は「ビット数を減らす際に生じるノイズを、意図的に付加したノイズで目立たなくすること」です。まさに、ノイズをもってノイズを制している訳です。

もっとも、ノイズであることに違いはないので、少ないに越したことはありません。そこで登場するのが、ノイズシェーピングという技術です。 [第2回] はこれについて見ていく予定です。

2014年3月16日日曜日

Fidelia 1.5.1 登場

Mac 向けの高音質ミュージックプレーヤー Fidelia がバージョン 1.5.1 になったので、早速アップデートしてみました。

当初、バージョン 1.5.0 としてリリースされましたが、 Mac App Store 版 で Receipt( Mac App Store からダウンロードしたアプリケーションを Apple ID とヒモ付けするための認証データ)の取扱いにバグがあったようで、リリース直後に取り下げられていました。1日余り後れて、修正版としてバージョン 1.5.1 のリリースとなったようです。

1. アイコンの変更

変更点として真っ先に分かるのが、アイコンが変わったことです。従来の ちょっと古くさい 趣のあるオーディオ機器っぽいアイコンから、クールでおしゃれなデザインになりました。

2. 起動直後のヘルプ表示

起動して気づくのは、スタートアップガイドが表示されるようになったことです。ヘルプにアクセスできるほか、 Audiofile Engineering のメーリングリストに登録することができます。

3. 初期設定パネル

Preference(初期設定)のアイコンも変更されています。最近の Apple のトレンドに合わせてフラット化されました。好きずきですが、個人的にはシンプルで分かりやすくなったと思います。





4. FHX の設定がより詳細に

アプリ内課金で追加購入できる FHX が、より細かく設定できるようになりました。具体的には、

  • Speaker Angle(シミュレートする仮想スピーカーの開き具合)が、従来は最大 60 度までだったのが、最大 75 度まで拡張されています。
  • Equalization(処理によって低音・高音のバランスが変化するのを補う)の対象となる周波数を選択できるようになりました。


5. 通知センター対応

トラックが変わる際に、通知センター経由で曲名等が表示されるようになりました。

いずれも細かい変更点ですが、「4」や「5」は音質や使い勝手に直接関わる点なので、着実に進歩していることが分かります。 Audiofile のスタッフは以前からバージョン 2.0 の開発に着手していると発言しているので、そこでの改良点のうち既存のバージョンに適用できる部分を先に出してきた、ということでしょうか。

6. その他の目に見えない変更点

内部的にはいくつかの重要な変更があったようで、リリースノートでは、

  • 問題のある音声ファイルを再生する際の信頼性の向上
  • 信頼性とパフォーマンスの大幅な改善
などが謳われています。そのためか分かりませんが、バージョン 1.3 世代と比べて奥行き感と広がり感が増したように感じます。よりオーディオ的(ハイファイ)になったと言えますが、オーディオ的な脚色がされている感じではないので、この変化は歓迎できます。バージョン 2.0 ではプレイリストの改善を含む大規模な変更が予定されているようなので、さらなる音質向上にも期待が高まります。

2014年3月5日水曜日

続・iTunes Store と Amazon MP3 の音質比較

楽のダウンロード販売としては現状で最も品揃えが良く、利用もしやすいと思われる iTunes Store と Amazon MP3 の音質を、 CD と比較 してみます。

前に「 iTunes Store と Amazon MP3 の音質比較 」と題して、それぞれから同じ楽曲を購入して比較しました。もともとは CD が手に入らないので仕方なしに、少しでも音質が良い方を選ぼうという話でしたが、やはり CD との差が気になります。このたび、ようやく CD を購入できる目処がついたので、早速購入してみました。

入したのは、もちろん前回と同じ、 Misth のアルバム "Rise of a New Day" です。前回も紹介しましたが、お気に入りなのでもう一度。

CD を購入したと書きましたが、実際には FLAC のダウンロード販売 です。方々探しまわって、ノルウェーの音楽ダウンロード販売サイト Klicktrack Music Store で購入できるのを見つけました。

き道に逸れて Klicktrack を紹介しておくと、 CD や CD-R も販売していますが、多くの商品がデジタルコンテンツで、MP3 (320kbps) と FLAC (44.1kHz/16bit) が選べます。再ダウンロード回数に制限はあるようですが、いったんダウンロードしたファイルはコピーやバックアップの数・回数・方法には制限がないようです。ユーザ登録は E-mail アドレスとパスワード、居住国だけなので簡単です。決済方法は VISA か Master Card 又は PayPal ですが、 Vプリカ で決済できました。

回は FLAC を選び、価格はアルバム全体で 12.00 USD でした(1曲単位だと 1.5 USD)。 あれ? ロスレスなのに iTunes Store の AAC より安くね? 明細を見ると、為替手数料込み1255円だったようです。決済が終わると、すぐにダウンロードを開始できます。1曲ずつダウンロードすることも、アルバム1枚をまとめてダウンロードすることもでき、その場合は Zip 形式で圧縮されます。今回は約 470MB で、ダウンロードに2時間弱かかりました。

念ながら、 FLAC のままでは iTunes での管理ができないので、バックアップをとったあと、 Apple Lossless に変換して iTunes に取り込みます。当たり前ですが、ロスレスからロスレスへの変換なので音質は変わりません。

1. ファイルの情報

今回購入した中で、比較対象の "Rise of a New Day" のファイル情報です。

データ量は、47,109,818バイトでした。前回の AAC や MP3 が 13〜14MB だったのと比べると、さすがに大きいですね。 WAVE に変換すると 66.8MB ほどなので、圧縮率は 30% 程度です。

2. スペクトラムとスペクトログラム

まず、前回の比較で結果の良かった iTunes Store の AAC を見てみましょう。

能書きは後にして、今回の FLAC の結果はこの通りです。

これをどう見るかですが、
  1.  波形図(上段)が若干違いますが、これは縮尺を間違えたのが原因のようです(よく見ると Sacle: Linear の右のダイヤルの位置が微妙にズレています)。
  2. スペクトラム(中段)だけ見比べると、一見して違いは分かりません。前回「4〜6kHz 付近で一段下がっているのは圧縮の影響ではないか」と書きましたが、どうやら制作段階からこのような周波数特性になっていたようです。
  3. スペクトログラム(下段)は違いが見て取れます。 iTunes Store の AAC の方はよく見ると最上部に「歯抜け」の部分があって、細かな櫛笥状になっていますが、 FLAC の方はみっちりと詰まっていて欠けがありません。全体的な色の濃さ、特に上半分(10kHz 以上)の密度感も高いように見えます。
これらを総合すると、
  1. 前回比較した iTunes Store の AAC も、 Amazon MP3 も、4〜6kHz 付近であからさまな間引きをしていた訳ではないようです。
  2. Amazon MP3 は 16〜18kHz 付近を境にバッサリ高音を切り落として、その分で浮いたビットレートを中音域に割り当てて音質を確保する方向性のようです。
  3. iTunes Store の AAC は、できるだけ高音域も残して、中音域も含めて満遍なく間引くことで音質を確保する方向性のようです。

3. 音を聞いてみる

ここでは今回の FLAC だけでなく、前回の iTunes Store の AACAmazon MP3 も交えて比較してみます。

FLAC
CD 相当のクオリティなので、これを基準にします。最近のポピュラー音楽のご多分に漏れず、ダイナミックレンジを圧縮した音ですが、音の広がり感や色彩感は悪くありません。

iTunes Store AAC
FLAC を聞いた後だとさすがに分が悪いですが、出だしの数秒だけでも シンバルの雰囲気が失われている のが分かります。特に 余韻が不自然 で、 全体的に細い というか痩せこけたような印象になります。また、重心の高い、 腰が浮いたような音 です。ボーカルのハイトーンなどは、 喉を絞めて無理やり声を絞り出したような窮屈さ を感じます。前回「霞がかかったようなモヤモヤ感がある」と書きましたが、全体的に 一歩下がったような感じ で、いわゆる「前に出ない音」です。 箱庭的 とも言えます。もっとも、全体としての雰囲気は維持されていると言って良いでしょう。そういう意味では違和感の少ない音です。

Amazon MP3
iTunes Store AAC と比べて、さらに辛くなります。まず、シンバルの 余韻があからさまにちょん切れている のが耳につきます。 全体的に色彩感がなく、伸びやかさもありません が、不思議とボーカルは嫌味が少ない印象です。音が左右に分離して、センターが薄く感じます。分離が良いというよりは、 空中分解 という表現が当てはまります。いかにも「左右のスピーカーから音が出てます」といった鳴り方で、音場感がありません。前回「メリハリのある音」と書きましたが、 iTunes Store AAC に比べると前に出てくる感じはあります。「 雑だけど分かりやすい音 」という表現が当てはまるでしょう。

おそらく、単体で聞いたときには、 Amazon MP3 の方が高音質だと感じる人も少なくないと思います。刺々しくて雑な音ですが、その分「音の頭」は捉えやすいので、リズム感やフレーズ感は分かりやすいと思います。

反対に、音を「音のお尻」で捉える人には、 iTunes Store AAC の方が自然に感じられるでしょう。また、こちらの方が Amazon MP3 よりは色彩感があり、荒さも見えにくい印象です。

4. まとめ

  • AAC の iTunes Store より、ロスレスのダウンロード販売の方が安い場合がある。プリペイドのクレジットカードならセキュリティ面でも安心で、手続も簡単なので、よく探してから買った方が良い。
  • iTunes Store や Amazon が圧縮時に「せこい」間引き方をしている訳ではないらしい。
  • 視覚的には iTunes Store の方が高域まで伸びているが、 CD 相当のクオリティを基準に比較すると Amazom MP3 ともども一長一短ある。

2014年2月14日金曜日

高音質なUSBケーブルを探す

はじめに

いわゆるオーディオ用 USB ケーブルは出てきません。オヤイデとか、ゾノトーンとか、Audio Quest とか、SAEC とか、Acoustic Revive とかの情報をお探しの方のお役には立ちません。

逆に、「オーディオ用 USB ケーブル」なるものを買うのに抵抗がある方には、ちょっと役立つかも?

特記がない限り、全て USB 2.0 仕様、通常の A - B タイプのケーブルです。

第一段

オーディオ用は扱わないと書いておいて、いきなり Monster Cable が出てくる訳ですが...
は Monster Cable のオーディオ用 USB ケーブルです。型番は忘れてしまいました。たぶん、RME Fireface UC を買ったときに販売店のオマケで付いてきたものです。期待を裏切らない、もっさりサウンドです。
は、Focusrite Saffire 6 USB を購入した際に付属していた USB ケーブルです。かなり細いですが、適度な固さとしなやかさを兼ね備えていて扱いやすいです。やや平坦な音ですが、嫌な感じはありません。

第二段

は EIZOのディスプレイモニタ SX2462W に付属していた USB ケーブルです。白色のテープに書いてある MD-C93 というのがパーツ品番のようで、補修部品用(?)に販売されているものがあるようです。若干こもった感じで、マイクケーブルで言えばカナレのような雰囲気があります。
協和ハーモネット 製の USB ケーブル で、布系の編み込みジャケットが被せられた BRAID シリーズの1つです。あまり見かけませんが、電子部品の店などで販売されています。価格そのものは 500円/m 程度と、一般的な USB ケーブルと変わりません。しなやかで扱いやすいケーブルですが、 音の方はかなりイケてます 。少し大人しい傾向ですが、嫌な音が出てこず、低域もぼやけないので、安心して使える感じです。B 端子側にフェライトコアを付けていますが、付けた方が若干締まりが出るようです。

第三段


LINDY のプレミアムゴールドシリーズです。なんと 25年のメーカー保証 という、他に類を見ない超長期の品質保証付きです。いずれも品名は プレミアムゴールド USB 2.0 ケーブルとなっていて紛らわしいですが、実物はかなり差があります。
はメーカー型番 37671(一の位は長さなので、2m なら 37672)というもので、やや細めのケーブル本体に、目の荒い編み込みジャケットが被せてあります。ジャケット込みの太さが 5mm 弱なので、ケーブル本体は 4mm 程度でしょうか。
はメーカー型番 37651(同じく 2m なら 37652)というもので、太さは 5.5mm ほどあります。それもあって、けっこう固さがあり、取り回しはあまり良くありません。B 端子側のフェライトコアは、後から取り付けたものです。

プラグ部分は、どちらも重厚な金メッキが施されています。これだけで数 10g はある感じですが、磁石には反応しないので鉄ではなさそうです(もっとも、差込み部分は磁石に吸い付きます)。

同じシリーズで、型番もよく似た2本ですが、音は全く異なります。 37671 は、低音が締まるものの、中高音に伸びやかさがなくなって窮屈な印象です。対する 37651 は、全体的に伸びやかさがあり、低音も深いところまで輪郭が明瞭でかなり良いです。無理して真面目に振る舞うのではなくて、 真面目がナチュラル といった感じです。

これだけ豪華なので、USB ケーブルとしては破格に高く、どちらも 2600 円ほどします。でも、これを「オーディオ用」と称して売ればもう1つゼロが増えるでしょうね。ボロい商売です。流通量が少なく、評判もあまり聞かないメーカーですが、これはなかなか良いものを掘り当てました。

2014年2月1日土曜日

ROCCAT Kone XTD は本当に Mac で使えるのか

ROCCAT のゲーミングマウス Kone XTD が Mac に対応したというニュースが昨年からチラホラ流れていますが、実際に使ってみたという記事を見かけませんでした。今回、フランス語の記事で1件だけ Mac での使用例を 見つけることができた ので、購入に踏み切りました。

ROCCAT は、ドイツのハンブルクに拠点を置くゲーマー向け周辺機器のメーカーで、日本の代理店は 岡谷エレクトロニクス です。 Kone シリーズは同社のゲーミングマウスの主力製品で、Kone XTD は Kone[+] の改良版に当たります。

Kone XTD の主な特徴として、
  1. 最高 8200DPI の高解像度センサー
  2. EASY-SHIT[+] 機能(後述)
  3. 576kb のオンボードメモリ(ハードウェアマクロ)
  4. 72MHz 動作の ARM プロセッサ搭載
  5. 自在に設定できるイルミネーション
などが挙げられます。しかし、あれですね。 マウスごとき に 72MHz 動作の CPU が入ってると思うと、凄い時代になったものです。子どもの頃に触ったパソコンが 33MHz とかだった訳で、今のマウスはその2倍以上の計算能力を持ってるんですね。何か、ものすごく無駄遣いしてる気もしますけど...

ウスそれ自体のレビューは他所様にお任せするとして、目下の関心事は 本当に Mac で使えんのか ってことです。結論から言えば、今のところ問題なく使えています。それも、 最新の Mac OS X 10.9 Mavericks で 。 ROCCAT の Kone XTD のサポートページ に行くと、確かに Mac 用のドライバが配布されてますが、"tested with Lion 10.7.5." ですからね。2013年9月9日にもなって Lion でしかテストしてないとかどうよ、と。その頃の Mac ユーザといえば「 Mavericks まだ〜?」っていう時期ですよ。せめて Mountain Lion でテストしてくれ、と。

ただ、1つ希望があったのは、件の フランス語の記事 で Mavericks に対応しているらしき記述があったことです。もちろん(?)フランス語が読める訳ではないので、Google 先生に頼んで英訳してもらいましたけど。

で、結果的には問題なく使えているようです。上記のサポートページから Mac 版のドライバをダウンロードしてインストールすると、「アプリケーション」フォルダに "ROCCAT Kone XTD.app" というアプリケーションが入っています。これを起動すると、設定ソフトが起動します。

ちなみに、最初に Kone XTD を Mac に繋いだときに、「認証を受けたベンダーのカーネルエクステンションじゃないけど、いちおうロードしたよ。ベンダーに問い合わせてね」といった趣旨の 警告 が表示されました。おそらく、ドライバの一部が Mavericks の Sandbox の仕様に適合していないためです。

フォントも含めて Windows 臭がプンプンします(笑)。「閉じる」ボタンが右上というのが、ものすごく違和感を感じますね。ここではセンサーの感度などの基本的な設定ができますが、注目は左下の "Mac OS Cursor Acceleration Fix" です。これを "Enable(有効)" にすると、どうやら「システム環境設定」のマウスに関する設定が全てバイパスされるようです。

ここでは、ボタンの割当てを設定できます。「何で2つもあるの?」って感じですが、これこそが EASY-SHIFT[+] 機能 です。 Kone シリーズのマウスは、親指の位置にある2つのボタン(一般的にはブラウザの「進む」「戻る」になっている)に EASY-SHIFT[+] 機能を割り当てることができます。これは、キーボードの Shift と同じく、マウスの各ボタンの機能を別の機能にシフトするものです。

たとえば、手前の親指ボタン(たいていブラウザの「戻る」が割り当てられている)を EASY-SHIFT[+] に設定すると、親指ボタンを押している間は右クリックでマクロを実効する、といったことができる訳です。

左側が通常時のボタン配置、右側が EASY-SHIFT[+] 時のボタン配置を設定するものです。マクロの登録・編集も、ここからアクセスします。

残念というか誤算だったのは、 ミドルクリックがない ことでした。たいていのホイール付きマウスの場合、ホイールクリックがミドルクリックに割り当てられています。 Mac の場合は Command+クリック に相当するもので、ブラウザの「リンクを新しいタブで開く」などに使われています。また、 装飾キー+クリックの割当てもできない ようで、回避手段がありません。というか、むしろこちらの方が深刻で、割当ての自由度が少なからず下がってしまいます。

ここでは、さらに詳細なマウスの挙動を設定できます。たとえば、縦方向と横方向で感度を変えたり、リフトオフディスタンス(マウスを上げたときにどこまで反応するか)を調整したりできます。

このマウスの目玉機能の1つ(?)、イルミネーションを調整できます。マウスの四隅にマルチカラー LED が仕込まれていて、グラデーションのような効果を得ています。点滅させたり、徐々に色を変化させたりと、かなり凝った仕掛けです。

ただ、実際にはそれほど派手な効果ではなく、使っている間は大半が手の影になって見えないこともあって、それほど目を惹く感じはありません。マットブラックを基調としたボディに花を添える程度と言って良いでしょう。

※ マウスパッドが Mad Catz じゃん、と気づいたあなたはかなりのゲーマーですね !?

このマウスの 変態 機能の1つ、ボタンのクリック数や動かした距離を計測して、一定値に他すると「実績」として表彰してくれる、らしいです。まあ、ドイツ人は数字が好きと聞くので...

最後はドライバ情報やサポートへのリンクです。

て、いかがでしょう。 Mavericks への対応が完全とは言えない状況 ですが、ハードウェアマクロはもちろん、イルミネーションなどのお遊び機能もちゃんと実装されていて、 Mac 版だから手抜きでいいや、という雰囲気はありません。まだ使い始めたばかりなので、見落としている機能や不具合があるかも知れませんが、第一印象としては結構良い感じです。

今回は省略しましたが、マウス自体の作りもかなり良いレベルです。比較的大柄なので、いわゆる「つまみ持ち」よりは「かぶせ持ち」に特化している印象ですが、パーツの合わせ目は丁寧で、もちろんバリなどはなく、ボタンの感触も「遊び」の少ないカチッとした反応です。ゲーミングマウスとしては落ち着いた外観なので、ビジネス用途にも良いと思います。


あとは、ドライバが継続して提供されるかどうかですね。今回 Mavericks で動作確認が取れたのでとりあえずの間は大丈夫ですが、次のメジャーアップでは Apple がいろいろ変えてくる可能性が高いので、その点だけが不安材料です。とはいえ、それを差し置いても良いマウスです。

2013年12月5日木曜日

Vox で正常に音が出ない場合の対処法

Vox はシンプルかつ高音質なプレーヤーでありながら、Mac App Store で無償で配布されている有難い存在ですが(→ 過去の紹介記事 )、音が割れて正常に再生できないというトラブルに見舞われました。

確認できた症状は、
  1. 外付けオーディオデバイス ( Focusrite Forte ) を出力先に選んだ場合、左チャンネルだけ音が出るが、異常に音量が大きく歪みまくる。
  2. サンプリングレートの自動切換え、Hog モードのON/OFF、物理メモリへのロードの有無に関わらず発生する。
  3. 内蔵オーディオを出力先に選んだ場合は、この症状は起こらない。
  4. いったん内蔵オーディオを選択中に再生し、そのまま Forte に切り替えると問題なく再生できるが、曲が変わると「1」に戻る。
というものでした。Vox が Forte のドライバと相性が悪いのかとも思って、ちょうど新しいドライバが出ていたのでアップデートしましたが、変化はありませんでした。Mac App Store のレビューを見ていると、OS 10.9 Mavericks では QT Plug-in が落ちるケースがあるようですが、現在は OS 10.8.5 を利用しているので、これも関係なさそうです。

いろいろ悩んだのですが、Vox の設定画面で気になったのが、"Audio" 設定の出力先として "Forte. / 4ch. / 0 layout ch." と表記されていた点です。結論から言うと、これが原因だったようです。下の画像は、問題改善後のもので、"Forte. / 4ch. / 2 layout ch." となっています。

ちなみに、内蔵オーディオの場合は "Built-in Output. / 2ch." となっていて、"layout ch." という部分が存在しません。ここが問題の核心であろうと睨みました。

デバイスの出力先のレイアウトとなると、思い当たるのは "Audio MIDI Setup.app"(日本語環境では「オーディオ MIDI 設定.app」)です。OS 10.8 Mountain Lion の場合、オーディオ設定はこのような表示になっています。

問題の起こっているデバイス(今回は Forte )を選択して、左下の歯車マークをクリックするか、デバイス名の上で右クリックすると、このような選択肢が表れます。

"Configure speakers..." を選択すると、このようなペインが出てきます。

"Stereo" の方は問題ないはずですが、"Multichannel" が今回のターゲットです。右のプルダウンから "Stereo" を選び、下の "left front" と "right front" でデバイスの出力を選びます。内蔵オーディオも含めて、最初は " - " となっていて未設定になっている可能性が高いです。

ここで出力先を指定したところ、上で書いたように Vox の出力先の表記が "Forte. / 4ch. / 0 layout ch." から "Forte. / 4ch. / 2 layout ch."に変わり、問題の症状は発生しなくなりました。

Vox の正確な動作が分からないのですが、どうもマルチチャンネルを扱える関係上、「オーディオ MIDI 設定.app」の「ステレオ」の方ではなく、「マルチチャンネル」の方を参照しているようです。このため、出力先がステレオより多いデバイスの場合、未設定では支障があるのでしょう。

この「マルチチャンネル」という設定パネルは非常に優れもので、たとえば6チャンネル以上の出力があるオーディオデバイスを使えば、5.1チャンネルサラウンドなども任意の割当てで出力できるようになります。Mac OS X の Core Audio の多機能ぶりには感心しますが、今回はそれがアダになったようです。

2013年11月28日木曜日

2013年版 Macで使えるオーディオアナライザソフト

2007年の記事「Macで使えるオーディオ・アナライザ・ソフト」を数回に渡って更新してきましたが、内容が雑多になったのと、試用したり、新しく見つけたソフトもいくつかあるので、2013年版としてまとめ直します。

あくまで素人レベルなので、方針としては、
  1. 無料で使えるもの
  2. 有料でも Mac App Store で販売されているなど入手が容易なもの
  3. ある程度機能が揃っていて、調整が簡単なもの
  4. 開発が継続されているもの
を目安に探します。

Sonic Visualizer

  • ロンドン大学クイーン・メアリーのデジタルミュージックセンターが開発している音響解析ソフト。研究機関レベルで開発されているので、信頼性が高いです。
  • 無償ソフト(オープンソース:GPLv2)です。
  • 音声ファイルの解析のみに対応しています。
  • 対応ファイル形式は WAVE、Ogg、MP3 です。
  • 解析ツールは、波形表示FFTスペクトログラムです。これらのツールは自由に組み合わせることができ、たとえば波形とスペクトログラムを上下に並べたり、スペクトログラムと FFT を見比べて経時的変化と瞬間的な周波数分布を観察するといったことが可能です。
  • レイヤー表示に対応しており、これらのツールを重ね合わせて表示することも可能です。
  • 波形やグラフ、グリッドの色を変えられます。
  • ラベルマーカーを書き込むことができます。
  • プレーヤー機能を備えており、音を聞きながら視覚的に把握することができます。
  • これらの特徴から、リアルタイムに音を観察するより、録音物をじっくりと仔細に研究する用途に向いています。
  • 利用できるプラグインは、Vamp、LADPSA、DSSI と、あまり一般的ではないものです。VST はライセンスの問題で原則不可(Audacity VST Enabler を介して部分的に利用可能)、Audio Unit は今後のアップデートで対応したいとのこと。
  • Mac 版のほか、Windows 版、Linux 版もあります。

LARA

  • ルツェルン音楽大学で開発されている音響解析ソフト。
  • 無償ソフト(オープンソース:GPLv3)です。
  • マクロを組めるなど意欲的に開発されているようですが、パッケージ形式で配布されているのと、インストール時に /Users/Shared 以下に色々配置するようなので、試用はしていません。

Blue Cat's FreqAnalyst

  • Blue Cat's Freeware Plug-ins Pack II に含まれる FFT プラグイン。
  • 無償ソフトです。プラグインメーカーの宣伝用ですが、ユーザ登録や無償ライセンスキーの申請は不要で、ダウンロードするだけで使えます。
  • 形式は Audio Unit や VST だけでなく、RTAS や AAX にも対応するなど、かなり本格的です。
  • プラグインなので単体では動作せず、ホストとなるソフト(具体的には DAW など)が必要です。Audacity では利用できません。
  • Mac 版のほか、Windows 版もあります。

Voxengo SPAN

  • FFT プラグイン。
  • 無償ソフトです。こちらもプラグインメーカーの宣伝用ですが、ユーザ登録や無償ライセンスの申請は不要です。
  • 形式は Audio Unit と VST です。
  • プラグインなので単体では動作せず、ホストとなるソフト(具体的には DAW など)が必要です。Audacity では利用できません。
  • 無償の FFT プラグインとしてはかなり高機能で、ステレオだけでなくマルチチャンネルにも対応します。パラメータを細かく調整できるので、使いこなせば強力なツールに なります。ピークホールド付きレベルメーターやコリレーションメーターのほか、クリップカウント、ピークレベル、RMS の数値表示といった機能もあります。
  • Mac 版のほか、Windows 版もあります。

iSpectrum

  • 無償ソフトです。
  • 外部入力のみで、音声ファイルの解析はできません。
  • 解析ツールは、FFT、スペクトログラム、オシロスコープが揃っています。
  • 観察する周波数帯域の上限と下限を簡単に設定できます。
  • OS 10.9 Mavericks に対応済みです。

Spek

  • 無償ソフト(オープンソース:GPLv3)です。
  • 音声ファイルの解析のみに対応しています。
  • 音声ファイルの処理に FFmpeg を使っているので、FFmpeg が読み込める形式であれば何でも対応しています( DRM で保護されたファイル以外はほとんど全ての音声データを扱えます)。
  • 解析ツールはスペクトログラムのみです。
  • Mac 版のほか、Windows 版、Linux 版もあります。

Electroacoustics Toolbox

  • 有償ソフトですが、Mac App Store でも購入できます(→ Mac App Store リンク)。現在の価格は22800円とかなり高価ですが、内容はそれに見合ったものでしょう。
  • レベルメーター、FFT、スペクトログラム、オシロスコープなどの多種多様な解析ツールのほか、サイン波やホワイトノイズなどの信号発生機能も内蔵しています。
  • 特徴として、S/N比や高調波歪率の表示ができるようです。
  • OpenGL と Quartz を利用した美しい表示です。GPU パワーに余裕のある Mac の方が快適でしょう。
  • Audio Unit プラグインが利用できます。Generator カテゴリにも対応しているので、AUNetRecieve 経由で他のアプリケーションや、ネットワーク越しに他の Mac の音声出力を観察することもできそうです。
  • OS 10.9 Mavericks に対応済みです。
  • 一部機能制限付きで30日間の試用ができるようです。

SignalScope / SignalScope Pro

  • Electroacoustics Toolbox から一部の機能を外した下位バージョンです。いずれも Mac App Store で購入できます(→ SignalScope / SignalScope Pro)。
  • Pro の方は、Electroacoustics Toolbox と同様に AU の Generator カテゴリに対応しているので、AUNetRecieve を利用できます。また、プレーヤー機能を搭載しています。
  • ベーシック版は、外部入力の信号しか観察できないようです。
  • OS 10.9 Mavericks に対応済みです。
  • 一部機能制限付きで30日間の試用ができるようです。

Spectre / Spectre Starter

  • 有償ソフトですが、Mac App Store でも購入できます(→ Spectre / Spectre Starter)。
  • レベルメーター、FFT、スペクトログラム、オシロスコープなどの解析ツールのほか、VU メーターを備えています。
  • Starter 版は初心者/学生向けという位置づけですが、コリレーションメーターが省かれている点は若干注意が必要です。
  • OpenGL と Quartz による美しい表示です。
  • Audio Unit の Generator カテゴリに対応しているので、AUNetRecieve を使って他のアプリケーションやネットワーク越しの観察も可能です。
  • 若干気になったのは、表示速度を上げても FFT の反応が若干遅いように感じました。体感上、数10ミリ秒の遅延があります。

AudioTest

  • 様々な種類の音声信号を生成します。
  • シェアウェアですが、Mac App Store でも購入できます(→ Mac App Store リンク)。

SignalSuite

  • 様々な種類の音声信号を生成します。
  • 有償ソフトですが、Mac App Store でも購入できます(→ Mac App Store リンク)。
  • Audio Unit の Generator カテゴリに対応しており、プレーヤー機能を搭載しています。

その他

  • RME や MOTU のオーディオインターフェイスは、DSP 上にオーディオアナライザ機能を搭載しています。オーディオインターフェイスとしての性能も高いので、音響解析の目的で購入するのも1つでしょう。

オススメ

  • 録音済みの音声ファイルを分析したい
    • この場合は、Sonic Visualizer がイチオシです。レイヤー機能やラベルやマーカーを書き込めるのが非常に便利です。ただし、オシロスコープがないので、位相を見たりするのには向きません。他のソフトを併用する必要があります。
  • リアルタイムに音声を視覚化したい
    • 必要な機能と予算によりますが、SpectreSignalScope Pro が良いかと思います。AUNetRecieve が神で、AU プラグインに対応した他のソフトに AUNetSend を挿しておけば、これらのソフトが外部解析装置として機能します。ネットワーク越しの観察も可能です。
    • ホストとなるアプリケーション(DAW など)があるのであれば、SPAN も良いでしょう。FFT は小気味よく動き、かなり細かい設定も可能で、とても無償ソフトとは思えません。
  • 予算度外視で良いものが欲しい
    • Electroacoustics Toolbox が良いのではないでしょうか。高機能すぎて私には使いこなせそうにありませんが...
  • ちゃんとしたオーディオインターフェイスを持っていない
    • RME や MOTU のオーディオインターフェイスを購入するのが良いでしょう。スペクトログラムはありませんが、FFT とオシロは入っているので、リアルタイムの音響解析には十分役立ちます。
    • 内蔵の音声入力も使えますが、業務用として一般的なバランス信号を受け取ったり、測定用マイクを使ったりするには、オーディオインターフェイスが必要です。これらの製品を買えばプロレベルの音響解析機能が付いてくるので、これから始めるには好適です。